花魁

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黒岩重吾という作家

今から47年程前、私が大学1年 巷は学生運動もようやく落ち着きかけてきた頃でした。

私の人生で一番良く本を読んだ時期でした。と言ってもそれほど自慢できるものではなく、文学小説、推理小説

社会派ドキュメント小説などを手当たり次第に読んでいました。

その中でも黒岩重吾という作家が好きでした。1924―2003の直木賞作家で面白い経験をした方です。

奈良に生まれ考古学に興味を持ち、同志社大学在学中に学徒動員で出征、ソ満国境で敗戦を迎え、命からがら帰国してからは闇ブローカーの道に進み、証券会社に務める。

株の暴落で資産を無くし、トランプ占いやキャバレーの呼込み等ありとあらゆる職種を経験する。

また悪友との飲みの場でゲテモノ食いに挑戦し腐った肉で生涯小児麻痺を患うのでした。

 

大阪で西成といえば、社会の底辺で生きる人たちが集まる地区でガラがわるいという評判で「一般人」はあまり好き好んで立ち寄ろうとしない地区ですよね。

彼はこの地区を舞台にした本格的な短編小説を書いていました。まだこの地区は当時、寒い冬には凍死した日雇い労働者が道端に転がっていることもよくあった頃でした。

その舞台は生と死が隣り合わせのすえた臭いのするデカダンスな生活の中で、人間本来あたりまえに持っている愛・憎悪・妬み・優越・侮蔑・後悔・ギャンブル・セックス・殺人等を飾り気なしに描く画家のような存在でした。

都会のサラリーマンの家庭に育った私には経験しようにも出来ないものだったのです。

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